« Autechre 来日公演 | トップページ | 御前会議 »

2005.03.16

浮雲

naruse
浮雲@VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ(3月6日)

監督:成瀬巳喜男
主演:高峰秀子/森雅之
(1955年/日本/124分)

1月にマルセル・カルネの「天井桟敷の人々」を見て以来というもの、「ひまわり」、そして「浮雲」と、なんだかメロドラマばっかり見ているような気がする。なんだろうな。どうやら、結ばれぬ男女の物語が好きなようなのだけれど、冷静になってみると、つくづくオバちゃん趣味だなぁとも思う。…ま、いいか。面白いものは面白い。好きなものは好き。仕方がない。

ヤルセナキオこと、成瀬巳喜男の代表作「浮雲」を見るのは2度目。3月5日から、VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズで、特集上映が行われているので、久しぶりに見ることにした。こういう機会がないと、なかなか古い映画を見ることがない。いいチャンスだ。

で、さっそく「浮雲」。コレ、メチャクチャ好きな映画なんだけど、覚えていないシーンがあまりにも多くて、ビックリした。人間の記憶力なんていうのは、つくづく曖昧なものだ(私だけかもしれないけど…)。「浮雲」全体のイメージはちゃんと覚えているのに、1つ1つのシーンについてはあんまり覚えていない。2度目、3度目と見るたびに、1つ1つのシーンの面白さに気付くことはよくあるけれど、「浮雲」も例外ではなかった。いい映画というのは、何度も見ても面白い。そして、1度目より2度目、2度目より3度目…という具合に、愛着が湧いてくる。

「浮雲」は、堂々巡りのハナシ。そして、結ばれぬ男女を描いたメロドラマ。戦時中、インドシナで知り合った富岡(森雅之)とゆき子(高峰秀子)は、戦後、日本で再会して再び惹かれ合うものの、富岡には妻がいて、2人の関係は煮え切らない。2人とも生活はうまくいかず、お互いをよりどころにするかのように、ダラダラとした関係が続いていく。忘れようと思った頃に、ひょこっと相手が現れたりして…。その繰り返し。

富岡は、ゆき子に対して、いちいち意地悪なこと言う。まるで小学生が好きな女のコに意地悪をするような感じ。普通の何気ない会話でも、ついつい意地悪なことを言ってしまうのだけど、分かるんだよなぁ、富岡の気持ち。悪意はないよ。とにもかくにも、一見、気難しそうな富岡に、大人になりきれていない、どこか子供のようなところがあったりするから面白い。例えば、伊香保温泉にあるバーのご主人(加東大介)と意気投合し、そのご主人とその奥さん(岡田茉莉子)、そしてゆき子と富岡の4人でお酒を飲むシーンがある。ご主人の奥さんに富岡は一目惚れ。メロメロ光線を発しながら、お酌をしたりするのだけど、こういうシーンは、分かりやすくていいなぁ。目の前のお子様ランチよりも、隣の席のカレーライスの方がおいしそうに見える…みたいな。で、結局、その奥さんと一緒に暮らしたりしてしまうわけだ。

富岡も、ゆき子も、戦後は生活がうまくいかない。堂々巡りを続けながら、だんだん堕落してく。面白いのは、富岡が、自分に対しても、相手に対しても、素直になれないところ。だから、富岡の本音の部分は、映画を見ている私たちにも分からない。例えば、本当は誰のことを愛しているの? …とかね。でも、きっと富岡自身にも、分からないと思うんだ。だから、堂々巡りが続くわけで。で、自分の本当の気持ちに気付いた時には、既に手遅れ。まぁ、なんともやるせない結末が待っているわけだ。人生、うまくいかないってことだね。

…おっと、ここまで書いて、ゆき子役の高峰秀子について何にも触れていないことに気が付いた。なんたってこの映画、高峰秀子がいいんだよな。やぶれかぶれな感じが…。

|

« Autechre 来日公演 | トップページ | 御前会議 »

コメント

*yo-yoさん、お邪魔します

僕もこの3、4月は成瀬、成瀬、成瀬ですね、

実際はニュープリント作品群(六本木)にも、
せっせと録画だけはしているCS放映の成瀬作品群
にしても、然程向き合えていないのですが、

成瀬映画は90分ほどの映画も多いわけですから、
これらにも向き合えぬ余裕の無い日々って何なの
か、少々貧しいぞ…くらいには思えていますかね(^^)

今日、CSで放映される「秋立ちぬ」は、
僕にとって最高の成瀬映画ではなくとも
最高にいとおしき映画、
ひと夏の少年と少女の出会いが心に眩しいとでも
云うか…

yo-yoさん、拙ブログでも成瀬映画をあれこれ
(―少しずつ)取り上げて行きますのでまた遊び
にいらしてくださいませ~

投稿: ダーリン/Oh-Well | 2005.04.14 11:57 午前

トラバさせて頂きました。映画「浮雲」は以前、BSで放映されたのを録画してあるので、折りにふれては見ています。CGではない本物の焼跡風景の中で繰り広げられる愛憎のドラマは何度見ても胸を撃つものがありますね。戦後日本の陰の側面を捉えた貴重な作品だと思います。

投稿: 下等遊民 | 2005.08.13 05:07 午後

トラバさせて頂きました。映画「浮雲」は以前、BSで放映されたのを録画してあるので、折りにふれては見ています。CGではない本物の焼跡風景の中で繰り広げられる愛憎のドラマは何度見ても胸を撃つものがありますね。戦後日本の陰の側面を捉えた貴重な作品だと思います。

投稿: 下等遊民 | 2005.08.13 05:07 午後

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/51641/3323427

この記事へのトラックバック一覧です: 浮雲:

» 「戦後60年」を考えるための手持ちの本 [サブカル雑食手帳]
今年は戦後60年という節目に当るため、特に終戦記念日を目 前に控えたここ数日はTV各局とも戦時下や敗戦直後、或いは 戦後日本の歩みなどに関する特集番組が目立つ。 また書店をのぞいて見ても立場やニュアンスの違いはあるもの の戦後60年を一応テーマに据えた書籍は..... [続きを読む]

受信: 2005.08.13 04:45 午後

» 二条の仇を九条で打つ-「成瀬巳喜男の藝術」オールナイト [nancix diary]
ようやっと、スクリーンで鑑賞してまいりました。京都・二条ではせっかく出かけたのにタッチの差で満席になり、見られなかった成瀬巳喜男監督の「浮雲」を、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで。しかも成瀬監督作品で見たかった「山の音」や、林芙美子の遺作「めし」、「妻よ薔薇..... [続きを読む]

受信: 2005.08.22 06:26 午後

« Autechre 来日公演 | トップページ | 御前会議 »