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2005.02.02

トニー滝谷

tony
トニー滝谷@ユーロスペース(1月29日)
監督:市川準
主演:イッセー尾形/宮沢りえ

*ネタバレあります。

原作は村上春樹「レキシントンの幽霊」所収の短編「トニー滝谷」。愛する者を失ったトニー滝谷の孤独と喪失感が描かれた小説に対して、映画ではちょっとニュアンスの異なるラストシーンが用意されていたのでビックリ。どっちが好き? そう聞かれたら、圧倒的に小説の方なんだけど、ラストが同じだったら、それこそ小説と全く同じだったので、これはこれでアリだと思う。

小説の場合、トニー滝谷が助手として採用した女性は、死んだ妻の身代わりではなかったけれど、映画では、妻も助手も宮沢りえが演じていることから分かるように、身代わりであることが意識されている。で、本当の身代わりになる可能性をほのめかすラストまで用意されている。

にしても、宮沢りえはうまいよなぁ。ガラス細工のような感じ。ちょっとしたことで壊れてしまいそうな雰囲気がよ~く出ていた。で、実際、ちょっとしたことで壊れてしまうわけだ。「トニー滝谷」は、ある意味、物欲のハナシ。トニー滝谷の妻は物欲を抑えきれずに、洋服を買いまくる。自分でもそんなにたくさんの洋服が必要ではないのは分かっていて、買いまくる。やめられない。そんな衝動を自ら抑えようとする時、交通事故に遭う。皮肉だよなぁと思うけど、案外そんなもんだろうなとも思う。部屋には洋服だけが残る。

映画「トニー滝谷」を見ると、市川準が、村上春樹の小説の雰囲気をできるだけ忠実に再現しようとしているのがよ~く分かる。全編に漂う無機質な透明感はまさにそれを狙ったものだろう。ナレーションが多いのも、突然、ト書きのようなセリフを登場人物にしゃべらせるのも、カメラがスライドするようにしてスーっと場面が変わっていくのも、村上春樹の小説の雰囲気を狙ったものに違いない。面白かったのは、滝谷省三郎(トニー滝谷の父)が中国で収容所に入れられていたシーンと、妻の洋服を処分して何もなくなった部屋にトニー滝谷が横たわるシーンがオーバーラップしたところ。歴史は繰り返す…じゃないけれど、時代と場所を越えてもどこかでつながっている感じは、村上春樹の小説そのものだよなぁ。

レキシントンの幽霊
村上春樹著

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コメント

はじめまして。
『トニー滝谷』の検索から参りました。

とても観たい映画なので、素晴らしい感想を観ると嬉しくなります(^^♪
宮沢りえさんは、適役だと思います。

あと、歴史は繰り返すですね……

早く観たいです!


投稿: 金の猿(金さる) | 2005.02.02 09:14 午後

 「トニー滝谷」に興味があって初めてきました。小説は読んでいないのですが、どっちを先に見るのがいいか迷ってしまいますね。読んでから見た方が面白いかなぁ。

投稿: 海音 | 2005.02.03 04:13 午後

金の猿(金さる)さん、海音さん、コメント、ありがとうございます。


> 宮沢りえさんは、適役だと思います。

ホント、そう思います。雰囲気がよく出ていました。トニー滝谷を演じたイッセー尾形も適役だったと思いますよ(学生時代のトニー滝谷を演じる姿にはちょっと笑ってしまいましたが…)。


> 読んでから見た方が面白いかなぁ。

村上春樹が好きだったら、小説を読んでから見た方が面白いかも…。でも、雰囲気もストーリーも基本的には小説に忠実な映画(一部をのぞいて)なので、どちらが先でもアリだと思いますよ。

投稿: yo-yo | 2005.02.03 04:31 午後

初めまして。
いろいろなサイトのTBからこちらに流れ着き、先程こちらの記事にTBさせて頂きました、「日日是好日~つれづれ日記~」を運営している、kumakumaと申します。

最初にTBさせていただいたものが「L」と間違った変なTBになってしまいました。大変お手数おかけして申し訳ありませんが、こちらを削除して頂けたら幸いです。

初めましてなのに、こんなコメントでごめんなさい!

投稿: kumakuma | 2005.02.21 11:37 午後

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