« 運命を分けたザイル | トップページ | FRF05出演アーティスト第一弾 »

2005.02.23

東京画

tokyoga
東京画@DVD(2月20日)
「ヴィム・ヴェンダース・コレクション」より
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:笠智衆/厚田雄春/ヴェルナー・ヘルツォーク
(1985年/ドイツ・アメリカ/88分)

ドキュメンタリー映画を無性に見たくなって久しぶりにヴェンダースの「東京画」を見た。

「東京画」は、「ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ」ヴィム・ヴェンダースが撮った小津安二郎へのオマージュ。「東京物語」のオープニングから始まり、「東京物語」のエンディングで終わる。つくづくミーハーで申し訳ないのだが、小津安二郎の「東京物語」は何度も何度も見ている作品(おそらく日本映画の中ではもっとも繰り返して見ている作品)で、冒頭に出てくる「松竹映画」「昭和二十八年度 藝術祭 参加作品」という画面を見るだけで、うるうるしてしまう。そして、目が離せなくなる。「東京画」も、そんな「東京物語」の引用から始まる。

「東京物語」には好きなシーンが幾つもあるが、冒頭の笠智衆東山千栄子による老夫婦のやりとりもその1つ。

東山千栄子「空気枕、ありゃぁせんよ、こっちにや」/笠智衆「ないことないは、よう探してみぃ」/(しばらくして…)/笠智衆「あ、あったあった」

この何気ないやりとりがたまらなく愛おしい。微笑ましい老夫婦のやりとり。しかし、ドキッとするのは、この東山千栄子のセリフに感じられる「あるべきものがない」という不安感。だからこそ、映画のラストの笠智衆のセリフがジーンとしみてくる。

1人になると、急に日が長ぉなりますわい

不在。つまり「そばにいるべきものがいない」のである。ヴェンダースの「東京画」も、そんな「不在」を撮った映画だ。小津安二郎の映画の中にあった東京が、1980年代初めの東京にはない。それが繰り返し撮られている。

「東京画」は、1983年に来日したヴェンダースが、カメラマンのエド・ラックマンと共に、「東京物語」の中にあった東京を探すかのようにさまよい歩いて撮った映像を軸に展開していく。しかし、目の前にあるのは、小津の映画の中にあった東京とはかけ離れた「夢遊病のような東京」。だからこそ、小津が撮った「神話的東京」が浮かび上がってくる。ヴェンダースはこんな風に言う。

優しく秩序ある映像がいっそう偉大で崇高に思われてくる/それがもはや存在しない/混乱を増す世界に秩序を与える力を持つまなざし/世界を透明にしうるまなざし

一方、夢遊病的な東京――。お花見の風景、やたらとカメラを構える日本人、パチンコに熱中する人々、デパートの屋上で「本来の目的を忘れて」ひたすらゴルフの練習をするサラリーマン、蝋細工の食品サンプル工場、ホテルのテレビに映し出される「タモリ倶楽部」のオープニング。面白かったのは、冒頭に出てくる駅のコンコースの映像。立ち上がって歩くことを拒否する子供が映し出されるのだが、母親が手を引っ張って歩かせようとするたびに、その場にしゃがみ込んでしまう。これもまた病的な東京の1コマだ。

こんな映像の間に、小津作品には欠かせない笠智衆や小津の助手を努めた厚田雄春のインタビューがからんでくる。彼らのインタビューから伝わってくるのは、小津に対する絶対的な敬意。小津作品を見ていなくても、このインタビューを見るだけで、いかにすごい監督なのかが分かるだろう。これほどまでに誰かに敬愛される人物というのはそうそういないと思うのだ。職人気質の厚田雄春は、インタビューの最後に涙を浮かべ、「これ以上は勘弁してください」という。この涙は、小津の「不在」に対するもの。そう、小津はもういない。

久しぶりに「東京画」を見てビックリしたのは、80年代前半の東京の景色が、今の東京とは全く違って見えるところだ。たった20数年前の景色なのに、当時の面影すら、今の東京にはほとんどない。

|

« 運命を分けたザイル | トップページ | FRF05出演アーティスト第一弾 »

コメント

draco beon merloro vinos

in http://hwjundr.info/sitemap2.html force way http://sy2onpj.info/sitemap1.html like measured http://sqpbhwm.info/sitemap1.html and

投稿: VialaddiftSaf | 2007.10.20 11:25 午前

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/51641/3053294

この記事へのトラックバック一覧です: 東京画:

» 桜とともにちりゆく景色 [三軒茶屋同潤会アパートぶろぐ]
                                  桜とともにちりゆく景色 徹夜明けで原付にまたがって向かうは五日市街道沿いの桜堤団地。先週の雨でほとんどの桜は散ってし... [続きを読む]

受信: 2005.04.18 04:51 午前

« 運命を分けたザイル | トップページ | FRF05出演アーティスト第一弾 »