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2004.11.30

狩人

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狩人@ユーロスペース(11月25日)

監督:テオ・アンゲロプロス
出演:ヴァンゲリス・カザン/ベティ・ヴァラッシ

仕事がひと段落したので有休を取って渋谷のユーロスペースへ。テオ・アンゲロプロスの「狩人」と「ユリシーズの瞳」をたて続けに見た。共に3時間弱の長編。6時間ぶっ続けで席に座っていると、さすがに腰とお尻が痛くなってくる。映画と映画の間にもう少し休み時間があったら、もう1本見たんだけどなぁ。ほとんどノンストップ状態だったのは、やはりキツイ。しかし、私の数少ない映画体験の中では、非常に有意義な1日だった。

「狩人」は「旅芸人の記録」に続く1977年の作品。いやはや、これがスゴイ映画なのだ。描かれているのは、たった1日の出来事。その1日に現在と過去、現実と幻想を交錯させ、ギリシア現代史をギュッと凝縮させている。アンゲロプロスは、「旅芸人の記録」では徹底できなかった1シーン1カットに、この映画で徹底的にこだわったという。「狩人」は、3時間近くもあるにもかかわらず、たったの47カットしかない。ロングショットがとにかく多い映画なのだが、その1カット1カットがスゴイのだ。現在から過去へ、過去から現在へ時間が縦横無尽に飛び、そこに現実と幻想が入り交じる。これらがすべて1カットの中で描かれるから、映画の中の時間の流れと、映画を見ている側の時間の流れが一致するわけだ。これが実に不思議な感覚。グイグイと映画の中に引き込まれ、気付いた時にハッとする(この映画で、何度、ハッとしたことやら…)。

*ネタバレあり

ハナシは、1976年の大晦日、狩に出かけた6人が雪山で不思議な死体を見付けるところから始まる。30年近く前のパルチザンの死体なのに、まだ暖かい。河畔のホテルに持ち帰って、そのありえない死体を中心に、6人の過去が映像証言として振り返られる。その映像証言とは、6人それぞれが経験してきたギリシアの現代史。暗くて重々しい歴史だ。そして、大晦日のパーティを迎える映画の終盤で、彼らは蘇った死体に銃殺される。この“幻想シーン”で彼らは、暗くて重々しい過去に殺されるのだ。

新年を迎えたラスト、6人は死体を元の場所に置いて、雪で埋める。冒頭で死体を見付けた時と全く同じシチュエーション。で、何事もなかったかのように、狩人たちはそこを通り過ぎるのだ。死体を見なかったことにする。歴史を見なかったことにするのである。唖然とするしかないが、それが悲しい現実。6人はそれぞれ、なかったことにしたい歴史を抱えているのである。

しかし、歴史はなかったことにはできないのが、絶望的に悲しい。

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