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2004.11.06

夕凪の街 桜の国

夕凪の街 桜の国
こうの史代著

出版社 双葉社
発売日 2004.10
価格  ¥ 840(¥ 800)
ISBN  4575297445

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

blogを始めて2か月とちょっと。初めてトラックバックを送ってくれた方のblog(Radical Imagination)をのぞいてみたら、こうの史代の「夕凪の街 桜の国」が紹介されていた。すぐに書店に行って探したが、なかなか見つからない。そもそもコミックのコーナーには年に数回しか足を運ばないから、山のようなコミックの中から目的の1冊を探すのは大変だ。bk1に頼ろうかとも考えたが、すぐに読みたい。というわけで、4軒目にして、ようやく見付けた1冊。

「夕凪の街 桜の国」は、「夕凪の街」「桜の国(一)」「桜の国(二)」の3つの短編からなる、戦後世代が描いた原爆の傷についてのハナシ。いずれも時代設定は戦後(「夕凪の街」は1955年、「桜の国(一)」は1989年前後、「桜の国(二)」は2004年が舞台)。約100ページの薄い本で軽いタッチで描かれているが、心にズシリと残る。

「夕凪の街」を読んで、真っ先に思い出したのは、この秋に見た映画「父と暮せば」。舞台は被爆10年目の広島で、主人公は、原爆で生き残った自分に対して罪悪感を感じている。「父と暮せば」で宮沢りえが演じた役もそうだったが、「自分は幸せになってはいけない」と思いこみ、例えば、恋愛に対してかたくなまでに拒否反応を示したりする。原爆で生き延びた者の傷が心身共に大きいのは分かるが、「父と暮せば」や「夕凪の街」に出会わなければ、このような罪悪感の感覚は想像すらしなかっただろう。「桜の国(一)」と「桜の国(二)」の時代設定は、グンといま現在に近づく。しかし、戦後60年近くが経っているにもかかわらず、原爆は未だに人々に深い傷を背負わせているのだ。数少ない被爆国に住む日本人として、まず想像力を働かすべき部分はここにあるのだろう。「夕凪の街」と「父と暮せば」の結末は異なるが、「夕凪の街」は、原爆病による死を間近に控えた主人公の、こんなひと言がグサリと突き刺さる。

十年経ったけど 原爆を落とした人はわたしを見て 「やった!またひとり殺せた」 とちゃんと思うてくれとる?

この言葉を、そのままブッシュに聞かせてやりたい。

今日、たまたま検索して見付けたblog(tamyレポート)で、毎月6日と9日に「6・9行動」という核兵器廃絶を求めた署名活動が行われていることを知った。「父と暮せば」の宮沢りえや「隠し剣 鬼の爪」の山田洋次監督も賛同しているそうだが、今日は11月6日。改めて、ヒロシマとナガサキについて考えてみるいい機会なのかもしれない。

このオチのない物語(「夕凪の街」)は、三五頁で貴方の心に湧いたものによって、はじめて完結します

「夕凪の街 桜の国」のあとがきにあった、こんな言葉が印象的。
(★★★★★)

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コメント

トラックバックありがとうございます。
宮沢りえさんは広島での舞台挨拶で、
「この映画は小さな力かもしれないが、核兵器を廃止する運動の力になれば」と語ったそうです。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn04080703.html">http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn04080703.html

「夕凪の街 桜の国」、すぐに読んでみようと思いました。

投稿: tamy | 2004.11.07 08:28 午前

はじめまして。
otokuniさんのブログ経由でこちらを拝見させていただき、トラックバックさせていただきました。
私の場合、「夕凪の街 桜の国」→「父と暮らせば」の順番で作品の存在に気付き、鑑賞しました。いずれも他人様のブログをうろついていたおかげです(笑)。
生き残った者の「傷」という点では、アウシュヴィッツから生還したイタリアのユダヤ人作家プリモ・レヴィの作品をつうじて思うところがありました。今回あらためてヒロシマに回帰してきて、戦争の無惨さに思いを重ねたところです。

投稿: 主義者Y | 2004.12.06 12:16 午前

主義者Yさん、コメント、ありがとうございます。

「夕凪の街 桜の街」、ブログがなかったら、きっと私も読んでいなかったと思います。ブログも捨てたもんじゃないな…と最近つくづく感じている次第です。

投稿: yo-yo | 2004.12.06 12:00 午後

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