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2004.11.03

隠し剣 鬼の爪

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隠し剣 鬼の爪@渋谷ピカデリー(10月30日)

監督:山田洋次
主演:永瀬正敏/松たか子

時代劇。っていうだけで、足が遠のいてしまうのはいけないとは重々分かっているけど、たまたま時間があったので見てみたら、これが良かったのでがんす。山田洋次(監督)+藤沢周平(原作)コンビの第二作「隠し剣 鬼の爪」、いやぁ、面白かった。早速、その足で、同コンビの第一作「たそがれ清兵衛」のDVDを購入してしまったくらい。さすが国民的映画(寅さん)を撮ってきただけのことはある。というか、今までまじめにチェックしていなかった自分に反省。にしても、他の映画は混んでいたのに、こっちは空いていたのは、何でだろう? 誰もが安心して楽しめる映画だと思うのだけど…。

時は幕末。ってことは、翌日(10月31日)に見たヴィスコンティの「山猫」の時代設定とも近いわけだけど、「山猫」が描いていたのは没落貴族。に対して、こちらは(没落)侍。幕末ということだから、もうすぐ侍そのものがなくなる、っていう時代のハナシだ。主人公の片桐平蔵(永瀬正敏)は、父の代までは百石をいただく裕福な武家だったものの、わけあって今は平侍。しかし、武家社会に疑問を感じつつも、侍であることを忠実に全うしている。

で、この映画の何がいいのか? 片桐家の女中役のきえ(松たか子)がいいのだ。女中だから主人の言いつけは何でも聞く。働き者で謙虚。やがて油問屋に嫁ぐんだけど、3年ぶりに平蔵と町で再会するシーンがある。このシーンがたまらなくいい。油問屋でこき使われてやつれているきえ。そんなきえを見て、平蔵は「きえは、幸せだか」と声をかける。きえは、頼りない声で「はい」と答えるんだけど、“けなげ”で“はかない”というのは、まさにこのことだ。で、町にはしとしと雪が降っている。こういうシーンを見ていると、映画っていいなよぁ、ってつくづく思うのだ。

きえの人生は常に受け身。当時の女中は、自分で自分の人生を作ることはできなかったんだなぁ、とつくづく思う。身分によって、人生はすべて決まってしまうわけだ。そう考えると、いろいろ不満はあるにせよ、今がいかにいい時代かっていうのも分かる。しかし、きえはいい主人に巡り会えたのだ。非常に後味のいいラストシーンに、思わず「よかったなぁ」と声をかけてやりたくなったくらい。永瀬正敏と松たか子のコンビ、いいじゃないか! しかし、いろいろハナシを聞いていると、これ以上に「たそがれ清兵衛」の真田広之と宮沢りえのコンビがいいらしい。う~ん、早く見なければ。

「隠し剣 鬼の爪」には笑いもあるし、かつての友、狭間弥市郎(小澤征悦)と平蔵との決闘シーンもしっかり魅せる。普段は感情を出さない平蔵だからこそ、怒りや愛情を表に出すときの気持ちがよ~く分かるし、それがしっかり伝わってくる。加えて、吉岡秀隆、高島礼子、田中邦衛などの脇役陣が良い。大げさかもしれないけど、娯楽としてパーフェクト。ハナシが大きくなりすぎるようなことはなく、ホント無駄なくまとまっているんだけど、山田洋次ってやっぱり偉大なんだなぁ。あと、原作がいいだろうな。時代小説はほとんどノーチェックなだけに、これから少しは読んで見ようかと思う。

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