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2004.10.29

夜のピクニック

夜のピクニック
恩田陸著

出版社 新潮社
発売日 2004.07.30
価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)
ISBN  4103971053

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高校時代の最後の大きな行事。その行事が終わると、3年生は受験勉強一色に染まる。私にも、そういう行事が(10年以上も前に)あったんだけど、恩田陸は、こういうのを書かせたらうまい。誰もが高校時代に味わったであろう感情をしっかり汲み上げて、それがちゃんと描かれている。だから、登場人物のひと言ひと言に「その気持ち分かるよ」とうなずきつつ、自分の高校時代を重ねながら読んだ。「夜のピクニック」に登場するのは、みんな普通の高校生。普通なんだけど、みんなキラキラしている。

小説の舞台は、ちょっとした進学校(だと思われる)。私も神奈川県のちょっとした進学校の出身だからか、家庭の事情や悩み、友だちとの関係などなど、登場人物の気持ちや環境が、よく分かる。「夜のピクニック」でいう、(3年生にとっての)高校時代の最後の行事は「歩行祭」だ。ひと晩、ただ歩くだけの行事。実際には相当ツライ行事なのだけど、ひと晩歩くだけというシンプルな行為の連続ゆえに、普段は考えないようなことを考えたり、普段は話さないようなことを友達と話したりする。そして、歩く過程と、高校生活を重ね合わせる。

高校3年生にとって、高校卒業後の世界というのは不安と期待がごちゃまぜになった複雑なもの。卒業すると同時に、行動範囲が今までとは比べものにならないくらい広くなり、そんな世界にポツンと放り出される。隅々まで見えていた世界が、実はちっぽけだったことに気付く。…と考えた時、高校3年生というのは大人と子供の境界にあたるわけだけど、「夜のピクニック」で歩くのは、その境界そのもの。「高校生活が(子供の自分が)、もう終わっちゃうんだ」というあの独特の感情が、「歩行祭」という行事を通じてうまく描かれている。

「夏休み明けくらいから、ずっと歩行祭のこと考えてるじゃん。考えてるっていうか、ずっとどこかで気に掛かっている。でも、実際はたった一日で、足が痛いとか疲れたとか文句言っているうちに終わっちゃうんだよな」

こんな気持ちがよく分かるのだ。私の高校時代も、毎年、秋に大きな行事があった。3年生ともなると、その行事の準備のためだけに夏休みを過ごしたりもするし、私もそうだった(もちろん、中には冷めている人もいる)。で、その行事の当日を迎えた時に、「もう終わっちゃうんだ」と、何だか寂しい気持ちにもなった。お祭りは永遠には続かない――。あの時の気持ちは、たぶんずっと忘れないと思うが、そんな感情がこの本にはぎっしり詰まっている。

とにかく、すっばらしい青春小説だ、これは。
(★★★★)

●恩田陸の高校小説として思い出すのはまずコレ

六番目の小夜子(新潮文庫)
恩田陸著

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コメント

すっばらしいながらも、
すっぱーい青春でしたね。

TBさせていただきました★
ではまた!

投稿: たま | 2005.01.21 07:11 午後

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