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2004.09.22

フォッグ・オブ・ウォー

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フォッグ・オブ・ウォー@六本木ヴァージンシネマズ(9月18日)

監督:エロール・モリス


ロバート・S・マクナマラ、ベトナム戦争時代の米国国防長官のインタビューで構成したドキュメンタリー。正式なタイトルは「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」。ちなみに、この作品は、今年のアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品(昨年はマイケル・ムーアの「ボーリング・フォー・コロンバイン」)。

マクナマラは、フォードの社長を経て、ケネディ&ジョンソン大統領時代に国防長官を歴任したエリート中のエリート。自らのキャリアを振り返りつつ、「11の教訓」を私たちの世代に残すという展開で、1つの教訓ごとにハナシは進む。

マクナマラのキャリアの大半は戦争と大きく関わっている。第二次世界大戦で頭角を現し、ケネディ政権下でキューバ危機を乗り切り、ケネディ&ジョンソン時代にベトナム戦争に関わる。本人もこう言っている。

 私は生涯を通じ、戦争の一部だった。

つまり、この映画でいう「11の教訓」とは、自ら関わってきた戦争から得た教訓だ。全編、「キューバ危機で核戦争を回避できたのは運が良かっただけ。21世紀になっても、同じようなことを繰り返していいのか?」という反戦メッセージが、マクナマラの発言にはこめられているのだが、かつてのアメリカの中枢にいた人物が言っている言葉だからこそ重みがある。マクナマラは、自らが関わってきた戦争を反省し、時には過っていたとハッキリと認めているのだ。

例えば、第二次世界大戦を振り返るシーン。広島や長崎に原爆を落としたのは、マクナマラの指揮官だったルメイ少将なのだが、インタビューでこう答えている。

 勝ったから許されるのか?
 私もルメイも戦争犯罪を行ったんだ。

しかし、だ。この発言、「よくぞ言ってくれた」という思いがないわけではないのだが、第二次世界大戦後、世界の命運を握ってきた人物の発言として捉えると、違和感を感じずにはいられないのも事実だ。では、なぜベトナムで枯葉剤を使ったのかーー。

ここまでの内容を映画で発言するのは大変なことだと思うし、それだけで価値のあることだとは思う。が、マクナマラは、肝心なところからは逃げるのである。戦争責任について問われ、動揺してしまうシーンすらある。

 自分の職務は大統領が決定した政策の実行を助けること。

こう言って逃げるのだ。

この映画の翌々日に見た「父と暮らせば」は、1947年の広島を舞台にした作品。原爆によって死んでしまった父の幽霊と生き延びたことに罪悪感を感じている娘の物語。映画のクライマックスで、こんなシーンがある。1945年8月6日、空襲警報が出ていないのに、1機のB29が飛んでいる。何かを落とす。そして、ピカーッと光る。すべてが地獄と化した瞬間。

このシーンを見た時に、「マクナマラはやっぱあっち側の人間なんだよな」ってことをつくづく思ったのである。いったい、政治によって翻弄されるのは誰なのか? それを忘れてはいけないと思うのだ。マクナマラがいくら反省をしようとも、例えば、イラクやチェチェンでは一般市民が死んでいるのである。何も変わっていないのである。

マクナマラが言う最後の教訓は「人間の本質は変えられない」。世界を動かす中枢を経験した者の発言として捉えると、やはり切な過ぎる。

いろいろと勉強しなければ、そして考えねば、と思った映画である。

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